プリンシパルを読んで
『このミステリーがすごい!2023年版』でも第5位にランクインしていた本書を手に取り読んでみました。この作家の作品は初めてであり、表紙のバレリーナの絵とタイトルからてっきり、バレーの話かと思っていましたが、全く別物で戦後のヤクザ社会の話でびっくりしました。
しかしながら、500ページ以上の大作ながら、物語に引き込まれ次から次へと一気に読んでしまいました。とても面白かったので、少しネタバレを含みますが、感想を書きたいと思います。
あらすじ
1945年、東京。大物極道である父の死により、突如、その「代行」役となることを余儀なくされた綾女。大物議員が巡らす陥穽。GHQの暗躍。覇権を目論む極道者たちの瘴気……。綾女が辿る、鮮血に彩られた謀略と闘争の遍歴は、やがて、戦後日本の闇をも呑み込む、漆黒の終局へと突き進む! 脳天撃ち抜く怒濤の犯罪巨編、堂々開幕。
出版社より引用
著者紹介
長浦京(ナガウラキョウ)
1967年埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業後、出版社勤務を経て、放送作家に。その後、闘病生活を送り、退院後に初めて書き上げた『赤刃』で2011年に第6回小説現代長編新人賞、2017年『リボルバー・リリー』で第19回大藪春彦賞を受賞する。2019年『マーダーズ』で第73回日本推理作家協会賞候補、第2回細谷正充賞を受賞。2021年『アンダードッグス』では第164回直木賞候補、第74回日本推理作家協会賞候補となる。他の作品に『アキレウスの背中』がある。
https://www.shinchosha.co.jp/book/354711/
感想(ネタバレもありますのでご注意を)
終戦後まもなくの時代。日本の復旧とともにその中で生きる極道の世界が描かれています。関東一円の最大級の暴力組織、水嶽本家の一人娘である綾女さんが、四代目組長である親父さん(玄太)が亡くなることで、暫定的に組長を継ぐことになり、あれほど嫌っていた極道の世界に入り込んでしまいます。 水嶽本家の父親ややくざの世界から関わらないように高等女学校の教師であった綾女さんでしたが、合法的な会社として存続するために水嶽商事(水嶽組の会社名)と名前を変えた会社の会長兼社長代行の地位に就くことになりました。正統な継承権を持つ兄が戦場へ赴いていたため、組長代行として就くことを決めたのは、他の暴力団組織に綾女自身が襲われ、子分であり綾女さんを守ろうとし匿った青木家を惨殺したことが原因でした。 若干20歳そこそこの若いお嬢さんが自分の命を賭して、組を継ぐことを考え報復していきます。また組の繁栄を第一に考え生きていきます。敵対する暴力団や私腹を肥やす政治家、GHQなどの抗うことができない組織に立ち向かっていきます。 著者の長浦京先生がこの作品は、『ゴットファーザー』を参考に日本版として作り上げられたようです。ゴットファーザーは、Part1から3まで映画で観ましたが、マフィアであるコルレオーネファミリーを描いた名作ですのでゴットファーザーが好きな人であれば、本作品ものめり込むのではないでしょうか。 綾女さんの最後の裏切りに会うところは、自分にとっては如何なものかと思いましたが、綾女さんの「どうでもいい」という言葉と「生きたい」という執念の言葉がとても印象的でした。500ページを超える大作ですが、面白くて一気に読んでしまいました。読後感は、最後のところでもの悲しいというかせつない感じがしました。
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